水分補給時には電解質も一緒に補給するとよいでしょう
体から水分が奪われるときと言えば、汗をかいているとき、尿をしたとき、下痢をしているとき、そして不感蒸泄の時でしょう。
そのようなときは、水分だけが体からでていくということはなく、ほとんどの場合で電解質を伴っています。
特に、汗をかいているときや下痢をしているときは、ナトリウムやカリウムを伴う場合が多いのですが、このうちナトリウム体内の水分バランスに直接関係する電解質ですので、不足している場合には補給することが重要になります。
水分補給の結果は電解質が握っている
大量に汗をかいているとき、その汗にはナトリウムと塩基の融合物である塩が含まれています。
また、下痢をしているときには、ナトリウムとカリウムも一緒に体外へ排泄されるといわれています。
どちらの場合でも、体から必要な電解質が奪われているのです。
このとき、お水だけを飲んでいると体内での電解質のバランスが崩れ、水分補給の効果が十分に得られない可能性があります。
水分補給時に電解質補給が必要な理由
体内から水分が奪われる理由には、下痢や嘔吐、大量の汗をかいたときなどです。
この時十分な水分が補給されないと、脱水を起こすのですが、特に乳幼児などでは十分な電解質が補給されないと水毒症をおこす危険性があります。
では、電解質は体内でどのような役割を果たすのでしょうか。
また脱水と、水分を摂りすぎた場合に起こる水毒症について、見てみましょう。
電解質の種類と役割
電解質にはいくつかの種類があり、それぞれに重要な役割を果たしています。
その電解質のいくつかについて、ご紹介しましょう。
細胞外液の中で主要な電解質です。
体液の浸透圧を一定に保つ働きの他に、筋肉の収縮や神経の働きにかかわるものです。
カリウム(K)
細胞内液の主要な電解質で、ナトリウム同様体液の浸透圧や酸塩基平衡の維持に関係しています。
また、心臓の筋肉の収縮においては重要な役割を果たしています。
カルシウム(Ca)
骨や歯の主要な成分です。
筋肉が収縮するきっかけを作る際の重要な電解質である他、血液の凝固に関係しています。
塩基(クロール、Cl)
ナトリウム同様、細胞外液の中で主要な電解質です。
ナトリウムを中和して水分のバランス維持に関係しています
また、胃酸の分泌にも関与しています。
腎臓で尿を作る際、これら電解質は一度はろ過されるのですが、最終的に尿細管というところで必要な分が再吸収、体の中へ戻されます。
このうち、特にナトリウムは体の中へどれくらいの水分を再吸収するのかにかかわっていて、体内の水分量を調節している電解質であるといえます。
その割に、汗や下痢の時には失われやすい電解質ですし、何より体液の浸透圧に最も関係の深い電解質ですので、重要なものということができると思います。
脱水とその種類
体から急激に水分を奪う現象としては、発汗と下痢が挙げられるでしょう。
ただ、発汗や下痢の際に奪われるのは、水分だけではありません。
発汗の際にはナトリウムとクロールが融合したものが塩として、また下痢の際にはナトリウムとカリウムが体から出ていくといわれています。
どちらの場合も、ナトリウムが体から奪われるわけですが、発汗の場合も下痢の場合も、その後に体内に残っているナトリウム量が重要になります。
この体内に残っているナトリウム量によって、発汗や下痢によって引き起こされる脱水には3つの種類があります。
等張性脱水
水とナトリウムが同程度に失われた場合の脱水です。
口の渇きを感じます。
この時水のみを補給していると次に述べる低張性脱水に移行しやすいといわれています。
低張性脱水
電解質であるナトリウムが欠乏している状態の脱水です。
発汗や下痢の時に、水分ばかりを補給していると陥りやすい脱水です。
高張性脱水
ナトリウム以上に水分のみが多く失われた状態の脱水です。
激しい口の渇きと発熱を伴うのが特徴です。
脱水を起越したとき、どの種類の脱水にあたるのかを知るには、やはり病院での血液検査が必要になるかと思います。
ただ、水分を補給するときには、お水だけではなく同時にナトリウム(塩)も一緒に補給したほうが良いようです。
低張性脱水の状態でお水のみを補給していると、次に述べる水毒症になる危険性もあるため、特に乳幼児の場合には病院などで適切な処置を受けたほうが良いでしょう。
水毒症
喉が渇いたときにはできるだけたくさんお水を飲みたいところですが、そうともいかないようです。
腎臓でろ過できる水分量以上にお水を飲むと、水毒症になりやすいといわれています。
では、乳幼児では特に危険だといわれる水毒症とはどのようなものなのでしょうか。
先ほども述べた通り、腎臓で尿を生成できるペースを上回るペースでお水を摂取することによって、細胞の膨化が起こり血中ナトリウム濃度が低下することで起こります。
細胞が膨化すると、たとえば脛などを指で押したときに、その押した痕がそのまま残って戻らないなどの浮腫(ふしゅ)の症状を示します。
血中ナトリウム濃度が低いほど症状はひどくなり、性格が変わったり神経過敏になる、注意力が散漫になったりします。
ひどい場合には痙攣や昏睡といった症状を招くこともあります。
水毒症で神経伝達が妨げられたり呼吸困難を起こして死に至ってしまったりするケースもあるようです。
汗をかいたり下痢をしたりしたとき、人によってはスポーツドリンクを飲むこともあるかと思います。
しかし、スポーツドリンクに含まれるナトリウムの量はわずかで、飲んでも十分なナトリウム量は摂取できないようです。
そのため、発汗後や下痢の後にスポーツドリンクを大量に飲んだとしても、ナトリウムは十分に含まれてはいないので、水毒症に陥る危険性があるようです。
経口補水液を作ろう
脱水を起こした際には、経口補水液を飲むのがよいといわれています。
薬局などで売られている経口補水液もありますが、自分で作ることもできます。
その作り方をご紹介しましょう。
経口補水液の作り方
- お水:1リットル
- 塩:3g(小さじ1/2)
- 砂糖:40g(大匙4と1/2)
これらを混ぜで出来上がりです。
飲みにくいようでしたら、レモン汁などを混ぜると飲みやすくなります。
つくった経口補水液は、飲めるのはその日のうちだけです。
作り置きはしないようにしてください。
この経口補水液もただがぶ飲みするのではなく、30分毎にコップ1杯程度のペースで飲むと良いでしょう。
水分補給時の電解質の重要性は?
発汗や下痢の際には、多くの水分が体から失われていきますが、同時に電解質も失われているのです。
特に体内の水分量調節や浸透圧調節に深くかかわっているナトリウムは、発汗や下痢の際に体から宇失われやすく、水分補給と共にナトリウムの補給も重要になってきます。
ナトリウムが体内で欠乏すると神経の閾値が低下して知覚が過敏になるのですが、これは江戸時代には拷問として使われたこともあるほどです。
水分補給時には電解質も一緒に補給しましょう。
体が正常に動くことができるのは、電解質の存在のおかげと言っても過言ではありません。
必要以上に摂取するのは別の病気を引き起こすため注意ですが、体から水分が抜けていくような現象が起こったときには、お水だけではなく電解質も補給するようにしましょう。