介護現場では水分補給が重要視されています
介護現場で対象となるのは、主に高齢者です。
高齢者では様々な原因で脱水に陥りやすいのですが、それに気づかず脱水が進行してしまう危険性が高いといわれています。
脱水によって減ってしまう水分は、主に細胞外液と言われる血液に含まれる水分です。
脱水を予防するためにも、水分補給は欠かせません。
お水や白湯という形で水分を摂取することが励行されます。
高齢者の場合、嚥下機能が低下しているので、お水などを飲む場合には、とろみをつけたほうがよさそうです。
介護現場では高齢者の水分補給に苦慮している
高齢者の場合には喉の渇きを自覚しにくいといわれています。
お水をそのまま飲むと誤嚥してしまう危険性も高く、またトイレにいく回数が増えることを嫌って水分を摂らない高齢者も少なくないようです。
お水を十分に摂取しないと血流が悪くなり、脳梗塞や心筋梗塞などの病気に陥る危険性が高くなります。
病気を防ぐためにも、お水を飲むことは高齢者にとって必要なことなのです。
介護現場で高齢者に水分補給がうまくなされない理由
高齢者には、十分な水分を摂取することが必要です。
それには、様々な理由があります。
ただ、加齢に伴って食べ物などを飲み込む嚥下機能が低下するために、お水を飲むと誤って気管に入ってしまう誤嚥を起こすことが少なくありません。
また、水分を多くとるとトイレに行く回数が多くなりますが、一部の高齢者はそれを嫌って水分摂取を控える傾向にあるようです。
高齢者が脱水に陥りやすい原因は、他にもいろいろとあるようです。
その原因と、高齢者がお水を飲むときの注意点についてみてみましょう。
加齢による臓器の変化
体の中で水分を多く保持しているのは、主に筋肉です。
この筋肉は30歳代をピークにして、その後は減少していくといわれています。
筋肉の減少は、体内の水分保有率を低下させることにつながります。
また、腎臓における変化も、体内の水分量に影響します。
加齢による動脈硬化の進行や、血液をろ過して尿の元になる原尿を作り出す糸球体と呼ばれるところが硬化することで、血液のろ過量は減少します。
このとき、体内でできる老廃物も一緒に排泄されるのですが、うまくろ過することができず、大量の水分がろ過されることになります。
このように、腎臓機能が低下することでも、高齢者の体から水分が奪われていきます。
さらに、人の体から水分が奪われ不足しているときには、脳にある口渇中枢というところが刺激され、それによってお水を飲むという行為につながるのですが、高齢になるとこの口渇中枢の機能が低下してくるために、喉の渇きを感じにくくなります。
口や舌が渇いていても、それを自覚することが弱いために、お水を飲むという行為に結びつかず、結果脱水が進行していくようです。
加齢による体内や行動の変化がもたらす脱水
人の体内を出入りする水分について、考えてみましょう。
体内に入る水分には、3種類あります。
一つは食べ物から摂取するもの、一つはお水として摂取するもの、そしてもう一つは体内で栄養素を代謝するときにできる水分です。
高齢になると胃腸の機能が低下することで、食事量が減少することから、食べ物から摂取できる水分量が減少します。
また、食べ物の水分を吸収してくれる腸の機能も低下するために、摂取できる水分量が減少します。
また、体内の代謝を支えている筋肉の量が減少することで基礎代謝が低下、体内で作られる水分量も減少してしまいます。
お水として摂取する水分についてはどうでしょう?
介護を必要とする高齢者の多くは、歩いたりすることに疲労を感じやすい方や、脳梗塞などの病気によって歩くことが困難な方が多く見受けられます。
このような状態になると、トイレに行くことも一苦労だったり、トイレに行くことが困難だったりするケースもあるようです。
こんな場合、周囲の人はおむつの使用を勧めますが、ご本人はできるだけおむつを使いたくないという気持ちが強いです。
すると、トイレに行くことが億劫になり、その原因となる「お水を飲む」という行為自体を止めようとします。
これらのことが原因となって、高齢者では水分摂取量が減少していきます。
では体から出ていく水分量はどうでしょう。
これには、尿として排泄される水分の他に、汗や不感蒸泄で体から奪われる水分があります。
腎臓の機能の低下で尿量が増えるために体から水分が奪われることについては、先ほど述べました。
汗や不感蒸泄で奪われる水分には、高齢者の行動が関係しているようです。
高齢になると、基礎代謝の低下から体温が低下、寒さを感じやすくなります。
どんなに外気温が高くても長袖を着て、ひどい場合には暖房器具を使っているほどです。
すると、吐く息に含まれる水分や自分自身では感じない皮膚からの水分排泄である不感蒸泄量が増えたり、汗をかいているのに気づかなかったりします。
こうなることで、体から奪われていく水分量が増えていきます。
高齢者は、これらが原因となって摂取する水分量と排泄される水分量のアンバランスが生じることで、結果排泄量の方が上回ることで脱水になってしまうのです。
高齢者の脱水に気づく方法と対策
高齢者は脱水を起こしていたとしても、それになかなか気づきずらいものです。
介護の現場では、職員がそのサインを確認して、早めに脱水に気づいてあげることが大切になってきます。
ここで、脱水状態になったときに見られやすい徴候についてご紹介しましょう。
- 脇の下がかわいている
- 尿の量が少ない
- 口の中が渇いている、唾液が少ない
- 微熱がある
- 皮膚が乾燥している
- 痰がらみの咳を繰り返す
また、高齢者の脱水を見つけるのに有用な「ハンカチーフサイン」というものがあります。
手の甲の皮膚をつまみ上げてその手を放したときに、皮膚が3秒以内に戻らない場合に脱水を疑うというものです。
あるいは、親指の爪を押した後には赤みがでますが、この赤みが2秒以内に戻らない場合にも脱水が疑われるといわれています。
これらのようなサインを使って、早めに脱水を発見してあげることが必要です。
では、脱水を予防するためには、何が必要なのでしょうか。
それはやはり、水分を摂取することです。
ただ、先ほども述べた通り、高齢者ではものを飲み込む機能、嚥下機能が低下しているために、特に水分などは飲み込むときに誤って気管に入ってしまうことがあります。
そのため、一度に大量にお水を飲むことは危険です。
舌が湿る程度の少しずつの水を繰り返し飲んでいただくことです。
あるいは、お水のようにサラサラしたものでは口の中で留め置くことが難しいので、とろみ剤などをつかってお水やお茶にとろみをつけて、飲んでいただくようにしましょう。
高齢者では体から出ていく水分量の方が多い
加齢によって高血圧や糖尿病になると、体から出ていく水分量はさらに増えていきます。
高血糖状態を解消するために尿量が増えたり、血圧を下げる薬の一部には腎臓での尿の排泄を促すものもあったりします。
その割に、食事の摂取量もお水を飲む量も減っています。
体におけるお水の収支にアンバランスが生じている状態ともいえます。
だからといって、安易にお水を大量に飲むこともおススメはできません。
それは、誤嚥の可能性があるからです。
誤嚥に注意してお水を飲んで脱水予防をしましょう
介護が必要な現場では、水分の摂取が思うようにいかないケースが多いようです。
それでも時間をかけ、少しずつでもよいのでお水やお茶を飲んでいただくようにしましょう。
その際には、誤嚥に気を付けて少量ずつお水を飲んでいただくようにしてください。