緑茶の茶葉からおいしさを感じる成分を十分に抽出できる軟水を用いて、必ず冷蔵庫で抽出しましょう

家庭でおいしい水出し緑茶を楽しみたいと考えたことはありませんか?市販の冷茶は便利ですが、自宅で手作りすると茶葉の種類や味を自由に変えられるメリットがあります。

しかし、作り方が難しくて家庭では楽しめないと考えている方もいるかもしれません。では、なぜ家庭ではおいしい水出し緑茶を作れないのでしょうか。

この記事では、おいしい水出し緑茶を作るために抑えておきたいポイントや注意点をいくつか解説します。最後まで読むと、家庭でも本格的な味を再現できるようになるでしょう。

水出し緑茶には軟水と硬水どちらを使うべき?

水出し緑茶をおいしく淹れるには、軟水がおすすめです。軟水は緑茶の茶葉からおいしさを感じる成分を十分に抽出できるのに対し、硬水では抽出しにくくなります。

そのため、軟水で淹れると緑茶特有のうま味や甘みが引き出されます。一方で、硬水では苦みや渋みが出やすく、おいしい水出し緑茶になりません。

水出し緑茶がおいしいと感じるのは、茶葉のうま味や甘み成分である「テアニン」を抽出できたときです。軟水を使い低温でゆっくり淹れるとテアニンが抽出され、おいしい水出し緑茶が楽しめます。

一方で、高温で緑茶を淹れた際には、渋みや苦み成分となる「カテキン」や「カフェイン」が多く抽出されます。硬水でも同様なので、水出し緑茶は30~60度程度の軟水の使用がおすすめです。

日本の水道水やペットボトル水の多くは軟水です。しかし、一部の地域のお水は硬水の場合があるため、事前に確認しましょう。

水道水で水出し緑茶を作っても大丈夫?

水出し緑茶を淹れる際には、水道水を使っても安全なのでしょうか。また、水道水を使って水出し緑茶を抽出する際の注意点について解説します。

日本の水道水は安全

日本の水道水は水道法により安全性を厳しく管理しているため、そのまま飲むことができます。世界を見ても、水道水をそのまま飲める国は12か国しかなく、日本はそのひとつです。

世界は196か国あり、その中の32か国のお水はそのまま飲めるが注意が必要とされ、そのまま飲めない国が大半を占めています。日本は、そのまま水道水を飲める12か国の中に含まれており、世界でもトップクラスの安全性を誇るのが特徴です。

ただし、水道水には消毒のため塩素を使用します。家庭の蛇口に水道が届く際には残留塩素として安全に飲める濃度に調整されていますが、人によってはカルキ臭さが水出し緑茶の味に影響を及ぼすと感じることがあります。

水道水のカルキ臭さに不安があるときは、ミネラルウォーターの使用がおすすめです。残留塩素の影響がないミネラルウォーターで水出し緑茶を淹れると、クリアな緑茶の味が楽しめるようになります。

また、ウォーターサーバーを使用するときは、軟水の天然水や不純物のほとんどを除去したRO水の使用がおすすめです。どちらも塩素の影響がありません。

水道水を使用する場合の注意点

水出し緑茶を淹れる際に水道水を使っても安全に飲むことができますが、人によってはカルキ臭さが気になるかもしれません。そのような場合は、一度沸騰させた水道水を使うとカルキ臭が解消されるためおすすめです。

水道水に塩素を使用するのは、病原菌の繁殖を防ぐためです。家庭に水道水が届くころには最低でも0.1mg/Lとなるよう定められており、感染症を防ぎつつ、人体に影響が出ないように塩素濃度が調整されています。

このように、塩素が含まれることで私たちが普段飲む水道水は安全性が保たれています。ただし、水道水が安全なのと、おいしさは別物です。

水道水に残留塩素が含まれるため、味や臭いに多少影響を与えます。味や臭いの感じ方に個人差がありますが、よりおいしく水出し緑茶を飲みたいときは、水道水を5分ほど沸騰させ残留塩素や発がん性が指摘されるトリハロメタンを揮発させるとよいでしょう。

トリハロメタンに対する基準

日本の水道水はトリハロメタンに対する厳しい基準が設けられており、水道法により0.1mg/L以下という決まりがあり、リスクは軽減されています。しかし、体への影響が気になるときは、塩素の副産物であるトリハロメタンも沸騰で揮発させると安心です。

沸騰させた水道水を冷ましてから水出し緑茶を淹れると、塩素臭さが軽減され、おいしくなります。塩素を軽減した水道水は雑菌が繁殖しやすくなるため、できた水出し緑茶は冷蔵庫で保存し、早めに飲み切るようにしてください。

おいしい水出し緑茶の作り方

ここでは、おいしい水出し緑茶の作り方を解説します。使用する茶葉は、煎茶、ほうじ茶、番茶、玄米茶など日本茶なら何を選んでも大丈夫です。

より甘みを引き出したいときは、深蒸しの煎茶を選ぶと濃く抽出できるのでおすすめです。まずは家庭で余っている茶葉を使って、水出し緑茶を楽しんでみてはどうでしょうか。

水出し緑茶の作り方

ポットに軟水の水道水またはペットボトル水を入れます。お水1Lに対し、茶葉は10g~30gを目安にお好みで調節してください。

1~2時間かけてゆっくりと茶葉の成分を抽出し、その後茶葉を取り出すため、市販のお茶パックに茶葉を入れると便利です。そのまま茶葉を入れる場合は、茶こしでこしてください。

抽出時間は茶葉の種類によって異なります。味の好みによっても変わるので、いろいろな茶葉と時間で試してみると楽しいでしょう。

緑茶に含まれるカテキンは4種類あり、水出しではエピガロカテキン(EGC)が抽出できます。さらに、うま味成分のアミノ酸も抽出され、苦みや渋みが少なく甘くまろやかな水出し緑茶に仕上がります。

水出し緑茶はカフェインや苦みが少ないため、子どもも飲みやすいです。EGCは呼吸器や消化器の粘膜免疫系に働きかけることがわかっています。

水出し緑茶は必ず冷蔵庫内で抽出

茶葉を入れたポットは、必ず冷蔵庫に入れるようにしてください。常温では雑菌が繁殖する可能性があるため、冷蔵庫で冷やしながら抽出するようにしましょう。

雑菌が繁殖した水出し緑茶は、場合によっては健康被害をもたらすことがあります。一見清潔そうに見える水出し緑茶でも、飲料に適さない場合があるため、注意が必要です。

冷蔵庫で抽出すると、雑菌の繁殖を抑え、緑茶の爽やかな香りや甘みが引き出されます。出来上がった水出し緑茶は、1日以内に飲み切るのが基本です。

抽出が終わった茶葉は取り出す

水出し緑茶が好みの味になったら、茶葉は取り出します。茶葉を入れたままにすると、濁りや苦みが出ておいしくなくなります。

クリアな味を楽しむために、抽出し終わった茶葉は取り出しましょう。また、茶葉を入れたままにすると、雑菌の繁殖の原因にもなります。

茶葉を市販のお茶パックに入れると、簡単に取り出すことができます。そのまま茶葉を入れるときは、茶こし付きのティーボトルを使い、別容器に移し替えると便利です。

水出し緑茶の作るときの注意点

水出し緑茶を家庭で作る際には、衛生面に注意が必要です。特に、塩素が含まれていないお水を使う場合は、以下の点に注意してください。

保存容器の清潔さも重要

作った水出し緑茶の腐敗は、容器に付着した雑菌が原因になることがあります。そのため、水出し緑茶を作る際には、容器を清潔に保つようにしてください。

容器は、使用する前に丁寧に洗い、一度乾燥させたボトルを使うと安心です。さらに清潔さを心がけるなら、熱湯消毒したポットを使うとよいでしょう。

お水を使った調査では、水洗いしただけの容器では数日後に雑菌が繁殖しましたが、熱湯消毒した容器では数か月放置しても雑菌が繁殖しませんでした。毎回容器を熱湯消毒する必要はありませんが、汚れを丁寧に落とし乾燥させたほうがよいでしょう。

また、1本の容器では乾燥が難しいため、2本を交互に使う方法がおすすめです。

劣化しやすいので早めに飲み切る

水出し緑茶を作ったら、冷蔵庫で保管し、24時間以内に飲み切るのが理想です。お湯で抽出した場合と比べて、水出し緑茶は殺菌成分が抜けませんが、それでも腐敗しやすい点に変わりがありません。

特に注意が必要なのは、保存温度が高いときや、保存期間が長いときです。茶葉をそのまま入れたままにするのも、雑菌が繁殖しやすいため注意が必要です。

雑菌の繁殖状況の比較結果

東京都西多摩保健所では、家庭で作った冷茶の雑菌の繁殖状況を比較しました。比較対象は、水出しで茶葉を入れたままにしたもの、水出しで茶葉を取り出したもの、お湯出しで茶葉を取り出したものです。

水出しで茶葉を入れたまま保存した冷茶の比較では、37度で24時間後に雑菌が増え始めました。20度では48時間で雑菌が増えましたが、10度では48時間後でも大きな変化がありませんでした。

また、水出しで茶葉を入れた冷茶と取り出した場合を比較すると、37度で保存した場合、茶葉を入れたままでも取り出しても24時間後に雑菌が繁殖しています。一方で、茶葉を取り除き10度で保存した場合では、48時間後でも雑菌は大きな変化がありませんでした。

茶葉を取り出して比較した調査では、水出しとお湯出しであっても37度で保存すると24時間後に雑菌が繁殖しています。一方で、お湯出しを10度で保存すると、雑菌の繁殖は抑えられました。

結果的に、保存温度は高いほど雑菌が繁殖しやすいことがわかります。水出し緑茶を作って飲むときにそのまま放置するのは避けて、特に夏場は、すぐに冷蔵庫に移動しましょう。

保存期間にも注意が必要で、茶葉を取り出して冷蔵庫で冷やす場合でも過信せず、24時間以内に飲み切ることをおすすめします。理想は、飲む分だけを作り、その日のうちに消費することです。

(まとめ)

水出し緑茶は、家庭でも手作りできます。プロが淹れた冷茶でも家庭で作ったものでも味が変わらないので、ぜひ家庭でもおいしい水出し緑茶を楽しんでみましょう。

カフェインや苦みが少ない水出し緑茶なら、毎日の飲み物としても最適です。呼吸器や消化器官の粘膜免疫系に働きかけるカテキンを摂取できるため、健康対策としてもおすすめです。

水道水で淹れる際に塩素臭が気になるときは、沸かした水道水を使うか、ペットボトル水やウォーターサーバーのお水を使ってみてください。塩素臭が軽減されると、緑茶そのものの風味を引き出し、クリアな味になるためおすすめです。