母乳の主なメリットは、消化の良さや豊富な栄養と免疫力を高める成分を含んでいることです

赤ちゃんを育てる上で、ミルクを選ぶか母乳を選ぶか、あるいは混合にするか。ご家庭それぞれの状況や考え方によって異なる、大事な選択です。

この記事では、その選択肢の一つである「母乳」について詳しく解説します。生後3kgの小さな体を、たった1年で約3倍にまで成長させる母乳の栄養価、病気から守る免疫成分、消化の良さ、そして心身の発達をサポートする多様な働き。

ミルクとの違いにも触れながら、母乳のメリットを見ていきましょう。

母乳のメリット:赤ちゃんへの嬉しい効果がいっぱい!

生後3kg程度の体重だった赤ちゃんが生後12か月には約3倍にも増える程、母乳は栄養豊富でその魅力は計り知れません。ここでは母乳の魅力について深堀りしていきます。

病気から守る抗体と免疫細胞が豊富

初乳には、赤ちゃんの免疫力を高める成分が多く含まれていますが、その後も免疫防御因子が含まれていることに変わりはありません。母乳は赤ちゃんにとって、病気を防ぐため重要になります。

・感染症予防

母乳には、ラクトフェリンやオリゴ糖などの免疫防御因子が含まれています。新生児は免疫系が未発達ですが、母乳を飲むことでさまざまな感染症から守られているのが特徴です。

実際にアメリカの研究では、母乳育児の乳幼児は、ミルク育児の乳幼児と比べて下痢の割合が64%低く、風邪による入院リスクが72%減少、急性中耳炎は50%減少しているという報告があります。

・アレルギー予防

母乳に含まれる免疫防御因子には、アレルギー予防効果も期待されています。ラクトフェリンやオリゴ糖など腸内環境に働きかける物質が、赤ちゃんのアレルギー発症予防になる可能性があり、さまざまな研究が行われています。

かつては乳製品や卵を赤ちゃんに早く与えると食物アレルギーになりやすいとされていましたが、近年は影響がないことがわかってきており、離乳食を遅らせる必要はありません。また、完全母乳育児で赤ちゃんのアレルギーを防ぐことは、証明されていないことを理解しておきましょう。

発達促進: 心身ともに健やかに育む

母乳には赤ちゃんの体や心の健康を育む栄養が豊富に含まれています。

・消化吸収が良く、赤ちゃんのお腹に優しい

母乳は消化が良く、赤ちゃんの胃腸に負担をかけません。そのため、母乳で育てると、赤ちゃんの消化不良や便秘を予防する効果が期待できます。

・脳の発達を促進する成分

母乳には、タウリンやDHAなど脳の発達に必要な栄養素が含まれています。また、ママの匂いが赤ちゃんの大脳皮質を刺激し、脳の発達を促すともいわれています。

・視覚の発達を促進する脂肪酸

母乳には、赤ちゃんの視覚の発達に必要となる、アラキドン酸やリノール酸などが含まれています。特に、アラキドン酸は乳幼児期に急速に蓄積される成分です。

・骨の成長に必要なカルシウムやビタミンD

母乳に含まれるカルシウムとビタミンDは、赤ちゃんの骨の成長に使われます。ママが食事から必要量を補えていないと、母体のカルシウムが使われるため、ママのためにもカルシウムが豊富な食事の摂取がおすすめです。

ビタミンDは食事から補えるほか、日光浴でも体内で生成されます。朝や夕方など紫外線が強くない時間帯に、赤ちゃんと一緒に散歩するのも良いでしょう。

知能発達: 学習能力を育む

母乳育児は、その刺激や栄養成分が赤ちゃんの知能や学習能力の発達に役立ちます。

・脳の神経細胞の成長と発達を促す

母乳を与えるときは必ず赤ちゃんを抱くため、ママとの触れ合いにより、赤ちゃんの神経細胞が枝分かれし脳神経の発達に役立ちます。

・学習能力や記憶力を高める

母乳に含まれるオリゴ糖は、赤ちゃんの脳を活性化する成分です。脳が活性化されると、記憶力や学習能力の向上効果が期待できます。

・コミュニケーション能力の発達を促す

母乳を与えるときにママが話しかけたり、目でコンタクトを取ったりすることで、赤ちゃんはコミュニケーションを学んでいきます。赤ちゃんはママの言葉がわかりませんが、脳に刺激を与えコミュニケーションを学ぶ第一歩となります。

母乳のメリット:授乳はママの産後回復に役立つ!

母乳育児をするメリットは赤ちゃんに対してだけでなく、ママにもあります。ここでは、母乳育児はママにどんな効果をもたらすのか詳しい内容を見ていきましょう。

授乳が母親の産後回復に役立つ理由

産後は母体の体が大きく変化しますが、母乳育児を行うと産後回復に役立ちます。

・オキシトシンの分泌と子宮収縮

赤ちゃんにおっぱいを吸われる刺激で、ママの体にはオキシトシンというホルモン分泌が高まります。オキシトシンは子宮の収縮を高める働きがあるため、母乳育児は妊娠中に大きくなった子宮を早く元の大きさに戻すため役立ちます。

・ホルモンバランスと精神的な安定

赤ちゃんと母乳育児で触れ合うことで分泌するオキシトシンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。ママがリラックスできる状態になるため、産後の精神状態を安定させる効果が期待できます。

・授乳とホルモンバランスの変化

出産で胎盤が排出されると、女性ホルモンが低い状態になります。産後は体の回復や育児を優先するため、女性ホルモンを低くして再び妊娠しないための体の働きが必要です。

母乳育児をしない場合では産後3~6か月で通常の女性ホルモンバランスとなります。一方で、母乳育児を続けると、卒乳後約3か月で通常のホルモン状態となるため、その間は妊娠しにくい状態が続きます。

母乳育児がママに与える負担と軽減方法

母乳育児はママに良い効果をもたらす一方で、ママに負担を与える問題もあります。ママの負担が増して母乳が出なくなるとメリットが得られなくなるため、ここでは負担を軽減する方法を紹介します。

・食事・休息・ストレスによる負担

母乳育児はママしか行えず、夜中の授乳も必要なため、ママは十分な睡眠が取れなくなるでしょう。食べ物にも気を遣わなければならず、授乳のたびに乳房が痛むのも大きなストレスです。

また、ミルク育児と比べて母乳育児は授乳回数が増えやすいため、ママは自分の時間が少ないと感じてしまう問題が挙げられます。

・負担を軽減する方法

母乳育児の負担を減らす対策としておすすめなのが、周りの協力を得ることです。パパや家族の協力を得て、授乳以外の赤ちゃんのお世話をしてもらいましょう。

また、母乳育児中のストレスは、誰かに話すだけでもストレス解消になります。赤ちゃんがいるママ友達や、母親に悩みを打ち明けるのもいいでしょう。

ママのストレス発散は、お茶を楽しんだりネットショッピングをしたりなど、短時間で楽しめる方法がおすすめです。ストレスが蓄積するときは、助産師など専門家に相談する方法も検討してみてください。

母乳とミルクの違い:それぞれのメリットと選び方

ママや赤ちゃんのためを思うと母乳育児を選んだほうがいいと考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。ここでは、母乳とミルクのメリットとデメリットを紹介しますので、柔軟な気持ちで選んでみてください。

母乳とミルク、栄養成分の差は?

母乳とミルクは、たんぱく質・脂質・炭水化物の量がほぼ同じとされています。エネルギー源や体を作るための成分はどちらも同じですが、母乳はビタミンやミネラルが不足しやすくなる可能性があります。

母乳育児では、ビタミンDやビタミンKが不足することが多いため、積極的に摂取量を増やす対策がおすすめです。

母乳のメリット・デメリット

母乳育児にはメリットがある一方でデメリットもあるため、それぞれを比較し、ママや赤ちゃんにとって最適なのか見極めてみてください。

・母乳のメリット

母乳のメリットは、赤ちゃんの免疫力を高める成分が含まれている点です。赤ちゃんの免疫機能は未発達ですが、母乳を飲ませることで感染症やアレルギー発症の軽減が期待できます。

また、母乳育児では赤ちゃんとの触れ合いが増えやすいため、オキシトシンの分泌が促され、赤ちゃんやママの精神的安定に効果的です。オキシトシンは子宮の収縮を促す働きがあり、産後の回復を助ける効果も期待できます。

・母乳のデメリット

母乳育児のデメリットは、ママの食事に気を遣う必要がある点です。ママが摂取したものは母乳を通して赤ちゃんに伝わるため、アルコール・カフェイン・一部の薬を制限する必要があります。

また、完全母乳育児ではママがいないと赤ちゃんの栄養が不足するため、ママの負担が増すデメリットがあります。

ミルクのメリット・デメリット

母乳育児と同様に、ミルクにもメリットとデメリットがあるため、自分にとって最適な方法なのか以下の特徴で比較してみましょう。

・ミルクのメリット

ミルクはママの負担が軽くなり、食事や薬の制限がありません。ママ以外でも授乳ができるため、パパや家族も育児に参加しやすいメリットがあります。

また、ミルクは赤ちゃんが飲んだ量を把握しやすいので、母乳育児と比べてそこまで体重管理にシビアになる必要がありません。

・ミルクのデメリット

ミルクのデメリットは、経済的な負担や手間が増える点です。母乳育児ならかかる費用はママが食べる食事代くらいですが、ミルクは粉ミルクや哺乳瓶などの購入が必要で、さらにミルクを作る手間もかかります。

特に夜中の授乳では、母乳育児よりミルクのほうがママの負担が増す可能性があります。母乳ならママが横になったまま授乳できますが、ミルクは調乳や温めに時間がかかる点がデメリットです。

母乳とミルク、それぞれの選択基準

母乳とミルクどちらを選ぶかは、さまざまな要素が関係します。赤ちゃんの様子や母乳の量から決める方法や、ライフスタイルから選ぶやり方があります。

赤ちゃんの体重が増えず尿量が少ないときは母乳が少ないサインです。母乳を与えても赤ちゃんがすぐに欲しがるときも、母乳が足りない可能性があります。

母乳不足の場合の解決策

母乳の量が不足しているときは、まず母乳の出を促す対策から試しましょう。赤ちゃんが上手く吸えないときでも、1日8~10回くらい乳首をくわえさせ、その刺激で母乳の出を促す方法が有効です。

また、乳房をマッサージする方法や、搾乳で母乳の分泌を促せるかも試してみてください。食事管理や水分量を増やす対策などもあるため、母乳の出が悪いときは助産師に相談しながら進める方法がおすすめです。

混合育児のポイント:母乳とミルクを上手に組み合わせる


赤ちゃんの様子や、ママのライフスタイルによっては、混合育児を選んだほうが適している場合があります。ここでは、混合育児の特徴と進め方を詳しく解説します。

混合育児のメリット・デメリット

混合育児のメリットは、母乳が不足しているときに赤ちゃんの栄養を補いやすく、周りも手伝いやすい点です。

一方で、混合育児にするとミルク作りの手間がかかり、費用の問題もあります。哺乳瓶は乳首から吸う場合と比べて赤ちゃんが楽に飲めるため、母乳を嫌がる可能性に注意しましょう。

母乳とミルクの割合を決めるポイント

赤ちゃんの体重増加がしにくく、尿量も少ないときは、母乳が不足している可能性があるため、ミルクの併用がおすすめです。

混合育児中のトラブル

混合育児では、母乳を嫌がる、または哺乳瓶を嫌がり、上手くいかないことがあります。まずは母乳を優先させ、赤ちゃんが乳首に吸うのが当たり前になるよう、乳頭混乱を防ぐ対策がおすすめです。

赤ちゃんが哺乳瓶を嫌がるときは、乳首の形を変えたり、スプーンで与えたりする対策を試してみてください。特に母乳の出は、赤ちゃんが吸う刺激に左右されるため、できるだけ授乳の回数を確保することが大切です。

トラブルが起きたら

混合育児でトラブルが起きたときは、助産師や医師など専門家に相談しましょう。ミルクの量や母乳の与え方について、専門家に相談できます。

また、混合育児が上手くいかないときは、母乳とミルクを交互に与える方法や、母乳だけを集中的に与える方法も試してみてください。

母乳育児でよくある疑問

母乳育児を進めていくうえでは、授乳期間を知ることが大切です。事前に全体的なスケジュールを把握しておきましょう。

母乳は生後何ヶ月まで必要?

生後1歳~1歳半で卒乳するのが一般的です。しかし、個人差があり明確な決まりはないので、赤ちゃんの様子やママの希望を考慮して決めましょう。

離乳は生後5~6か月くらいから始めることが多いので、このころから徐々に授乳回数を減らしていきます。

授乳中の離乳食とのバランスは?

離乳期でも赤ちゃんにとって母乳は重要な栄養源です。そのため、離乳が進んでも赤ちゃんが欲しがるようなら母乳を与えて問題ありません。

ただし、離乳が進むにつれて、母乳の量や回数が減っていくのが一般的です。

卒乳・断乳に向けて何をする?

卒乳は、赤ちゃんが自然に母乳を欲しがらなくなることで、断乳はママの都合で授乳を止めることを指します。赤ちゃんが自然に卒乳できるのが一番ですが、長い間卒乳できなかったり、ママの負担が大きくなっていたりするときは、断乳を選択する場合があります。

どちらの場合でも個人差があるため、赤ちゃんの成長やママのライフスタイルに合わせて、柔軟に進めていきましょう。

(まとめ)母乳のメリットとミルクの場合との違いとは

母乳の主なメリットは、消化の良さや豊富な栄養と免疫力を高める成分を含んでいることです

母乳のメリットは、赤ちゃんの免疫力を高め、消化を助け、心身の成長を促し、知能の発達にも寄与するなど多岐にわたります。加えて、母乳育児はママの産後回復や心の安定にも繋がり、親子の絆を育む大切な時間となるでしょう。

もちろん、ミルクも赤ちゃんの成長に必要な栄養を含んでいます。それぞれの特性を理解し、ご自身の状況に合わせて母乳とミルクを上手に育児に取り入れてみてください。